グローバル社会において技術者は、多様な社会的ニーズや要求を見出すだけではなく、つねに生起する様々な問題について、倫理的な判断を下しながら問題を解決していかなければなりません。
一般の人々に求められる道徳や道義などに加えて、高度な専門的知識をもつ専門家として高い倫理観が求められています。
技術者には
- 社会や公衆に対する責任
- 雇用者または依頼者に対する責任
- 組織責任者としての責任
- 専門職業に対する責任
などが求められますが、①社会や公衆に対する責任については、④専門職業に対する責任については、法律さえ守っておけばいいと安易に考えてはなりません。
法律は倫理そのものではありません。技術者は、自らの品位を向上させ、技術の研鑽に励み、国際的な視野に立つ倫理観を身に着ける努力をしながら、社会や公衆との関係の中で、倫理と法をめぐる課題について考え続けなければなりません。
倫理と法の違いについて
倫理は、個人の内面の問題で、倫理に違反する行為を行った場合、周囲から批判されることはあっても、他社からなにがしかの行為を強制されることはありません。
法は、規範を遵守しない者に対する罰則を前提としていて、法に適う行為を人々に強制します。
法に違反した場合には、誰に対しても等しく罰則が適用されます。
倫理と法の関係性に関して、倫理と法は重なる部分がある関係にあるのか、あるいは倫理が法を包括して法は倫理の一部となっているのか、2つの関係性が考えられるが、いずれにしても技術者には、より高度な倫理観が求められると同時に、法を順守すること(法令順守)が求められるということがいえます。
コンプライアンスについて
技術者は、国内法はもちろん、企業が進出している外国の法も順守しなければなりません。
どの国においても、個人の倫理観による自主規制だけでは達成されにくい公衆の安全や公共の福祉を実現するために、法律や法令による規制が行われています。
コンプライアンスとはもともと、法律を順守することだけをさすのではなく、自分以外の者からの要求や希望に応じることを意味しています。
従って技術者のコンプライアンスとは、その国の法令を順守することだけを意味するのではなく、法律の規制がない場合においても公衆の安全に配慮する社会的要請に応えていかなければならないと解釈するべきです。
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